退職しても傷病手当金を健康保険から受給できる?失業給付は?
2017/04/17
健康保険の被保険者が病気やケガで一定期間、会社を休んで収入がない場合に、健康保険から「傷病手当金」を受給することができます。退職したら受給は終了しますが、退職後も引き続き、傷病手当金を受給できる場合があります。
また退職後も傷病手当金を受給する際に、合わせて行うべき手続きとして「失業給付の延長手続き」というものがあります。
そこで本記事では、退職後も「傷病手当金」を受給できる条件と、「失業給付の延長手続き」についてご紹介いたします。
退職しても傷病手当金を健康保険から受給できる?
(1)健康保険の傷病手当金とは
傷病手当金は、被保険者が病気やケガで会社を休んで収入がない場合に、会社員が加入している健康保険(健康保険組合、および、協会けんぽ)から支給されます。
これは以下の条件をすべて満たしている場合に支給されます。
- 私傷病の療養のための休業である
- 働くことができない状態である
- 連続する3日間を含み、最低でも4日以上働けなかった
- 休業した期間、報酬の支払いがない
協会けんぽの場合、標準報酬月額の3分の2の金額が、最大で1年6ヶ月(18ヶ月間)支給されます。健康保険組合も同様ですが健康保険組合ごとに規定されています。
(2)退職後に傷病手当金の給付申請をして受給したい
退職することにしたが、退職後に健康保険の傷病手当金の申請をして受給したいという場合について記載します。
(2)-1 傷病手当金の給付申請の流れ
傷病手当金を受給するためには、在職中に3日間、連続して仕事を休んでいることが必要です。これを待期期間といい、この3日間については傷病手当金は支給されません。
そして、次の4日目から傷病手当金が支給対象になります。
傷病手当金の申請には所定の申請書があり、そこには以下の欄があります。
- 本人記載部分
- 事業主の証明欄(働けなかった期間などを記載)
- 担当医師の意見欄(病状や就労不能である旨を記載)
医師に意見欄を記載してもらってから本人記載部分と共に申請書を会社に提出します。
そして会社経由で協会けんぽ(または健康保険組合)に申請が送付されます。
(2)-2 資格喪失後の継続給付
傷病手当金は、基本的には在職者が対象ですが、下記の2条件ともに成り立つ場合は、退職後も引き続き、支給の対象になります。
A.傷病手当金を支給されている状態で退職して、その後も医師が記載した就労不能と言う意見書があること。
B.退職までに、健康保険の被保険者期間が1年以上あること。
退職後も傷病手当金が継続して支給されることを「資格喪失後の継続給付」といいます。
支給期間は、在職中に受給した期間も含めて最大で1年6ヶ月間です。
傷病手当金の受給をお考えで診察を受けていないのでしたらすぐに受診して、医師に相談しましょう。
その結果、療養して再び働ける見込なら仕事に復帰するのがよいですが、(休職しつつ傷病手当金を受給)の状態でそのまま退職する場合は、退職後も継続給付の対象になります。
厳密には、条件が揃えば、傷病手当金の申請手続き自体は退職してからでも可能です。しかし、支給決定までは協会けんぽや健康保険組合の中で審査や手続きの時間が必要です。
また、第1回目の支給に至るまでに会社の協力が必要なので退職する前に早めに(出来れば2ヶ月以上前から)傷病手当金の申請を進めておきましょう。
(在職中に医師の診断を受けて、傷病手当金の申請書類の医師の意見欄に記載してもらってから会社に申請を出しておく)
(2)-3 傷病手当金の申請先
傷病手当金の申請は、毎月記入して、会社経由で協会けんぽや健康保険組合に提出します。
最初に1回申請したらあとは給与のように毎月振り込まれる、というわけではありません。
傷病手当金の申請は退職前は会社を通して行いますが、退職後は、会社を通さず自分で直接、健保組合や協会けんぽに申請する形になります。
但し、退職後であっても、退職前の期間の分については会社を通して申請します。
(3)国民健康保険の加入と傷病手当金の継続給付について
退職にともない、それまでの
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)
- 健康保険組合(組合健保)
をやめて『国民健康保険』に加入した場合、退職後の傷病手当金はどうなるでしょうか。
また、それまで加入していた協会けんぽや組合健保をやめずに任意継続した場合に退職後の傷病手当金はどうなるでしょうか。
退職後の傷病手当金の継続給付ですが
- 国民健康保険に 加入する/しない
- 健康保険の任意継続を する/しない
は関係してきません。
先ほど『(2)-2 傷病手当金の資格喪失後の継続給付』で記載した、A.とB.の2条件とも成立すれば、退職後も引き続き、支給の対象になります。
傷病手当金と失業給付
退職した場合、傷病手当金と失業給付は同時に受給できません。
傷病手当金は療養して働くことができないことが前提ですが、失業給付は働けることが前提ですのでこの2つは同時に受給できません。
退職後も傷病手当金を受給している場合には、ハローワークで「失業給付の延長手続き(求職者給付の受給期間延長)」を行います。
失業給付の延長手続き(求職者給付の受給期間延長)について
退職した日の翌日から1年間は、失業給付(失業手当)を受け取ることができる期間(受給期間)となっています。
その受給期間の間に、「所定給付日数」を限度として失業給付の受給が可能です。
「所定給付日数」 は、雇用保険の被保険者であった期間や退職理由等で異なる日数となっています。
病気療養などで働けない場合には、「失業給付の延長手続き(求職者給付の受給期間延長)」を行うことで最大3年間、受給期間の延長ができます。
働ける状態になったと医師が判断すれば傷病手当金は打ち切られますが、ハローワークで失業給付の手続きをして失業給付を受け取れるようになります。
失業給付の延長手続きの流れ
失業給付の延長手続きとしては、まず退職した会社から離職票を入手します。ハローワークからは退職の前など、早めに申請に必要な書類を入手しておきます。
申請に必要な書類として、医師に病状を記載してもらう病状証明書が指示された場合は、退職後、速やかに医師に記載を依頼してください。
そして退職後30日を過ぎてから1ヶ月以内に、ハローワークで手続きを完了させる必要があります。
失業給付の延長手続きが可能な期間は上記のとおり1ヶ月間となっていますので注意が必要です。
まとめ
会社員が加入している健康保険から支給される傷病手当金と、失業給付の延長手続きについてご紹介いたしました。
傷病手当金の手続きは在職中になるべく早めに、また、失業給付の延長手続きは期間が退職後の『特定の1ヶ月間のみ』となっていますのでご注意ください。
ご参考にしていただけましたら幸いです。